2019年08月03日 23:59
グスク論争と言えば、決まって聖域説・防御集落説・城説の3つが紹介されます。
それらに比べると認知度はかなり低いものの、グスクを考える上で非常に重要な説がもうひとつあります。
小島瓔禮(よしゆき)氏の
グスク聖域説(山岳信仰)です。
聖域説(山岳信仰)は、仲松氏の聖域説(葬所)と同じく、グスクは聖域であり、人の居住空間ではなかったと考えています。
では、山岳信仰説と葬所説とでは何が違うのか?
それは、グスクにおける信仰対象です。
葬所説を唱えた仲松氏は、グスクの信仰の根源は葬所(墓・風葬所)であると考えました。
沖縄中の御嶽・グスクを踏査した仲松氏は、御嶽・グスクには必ずと言っていいほどお墓や風葬所があることを見出しました。
そこで仲松氏は、御嶽・グスクの由来は、「首長・創始者、救世者といった者の葬所」であると結論付けました。
村の偉い人のお墓が拝まれ、墓一帯が聖域となったのが、
御嶽・グスクの始まりと考えたのでした。
一方、小島氏は、日本本土から琉球弧の端に至るまで、山を神聖視する信仰が広く存在することを指摘し、
御嶽・グスクの信仰も、山岳信仰の一種であると結論付けました。
簡単に言ってしまうと、葬所説と山岳信仰説の争点は、
御嶽・グスクの信仰の起源は墓か?山か?
ということです。
次回、御嶽・グスクの信仰がどれだけ本土の山岳信仰と似ているか、小島氏が紹介した事例のお話をします。
参考文献
・小島瓔禮「オタケ(御岳)からみた山岳信仰」中野幡能(編)『英彦山と九州の修験道』名著出版 1977年
・小島瓔禮「沖縄の聖地 ―グスクとテラと」『現代宗教―3 特集・聖地』春秋社 1980年
・仲松弥秀「『お嶽』の本体」『沖縄文化』第2号 沖縄文化協会 1961年