聖域に君臨した按司4 大城グスク
グスク時代の支配者、按司(あじ)は、聖域(=グスク)に君臨することで自らの権威・神威を誇示した。
(
グスク支配者聖域君臨説)
今帰仁・中城・座喜味と過去3回、世界遺産の事例を見てきましたが、首里、勝連は後回し。
今回は、知る人ぞ知る南城市大里の
大城グスクをご紹介します。
大城グスク遠景写真の角度のせいであまり見栄えが良くないですが、三輪山を彷彿とさせる美しい稜線を描くグスクです。
とは言え、近づくと石灰岩の絶壁に阻まれる、天然の要害でもあります。
山頂部には広い平場が造成されており、頂部イベ石のすぐ隣に正殿が建てられています。
下図のような
典型的「支配者聖域君臨」の構造です。
上の写真が正殿跡です。
木が邪魔で分かりにくいのですが・・・
円柱状の大きな石が並んでいるのは、柱の礎石です。
そして、イベ石は写真中央、奥の森の中にあります。
木々に隠れて大きな岩がそびえ立っているのがわかるでしょうか?
正殿からほんの数mのところです。
イベ石の拝所は、正殿の裏側にあります。
どうですか、この威容!
こんな立派な神の岩の真横に君臨するなんて、視覚的にもかなり強烈なインパクトがあったに違いありません。
イベ石と正殿を並び立てることが、まさに権威の象徴となっていた訳です。
ところで、「按司がイベ石に隣接させて正殿を建てた」と主張する研究者は、
私以外にもう1人いらっしゃいます。
国立歴史民俗博物館名誉教授
吉岡 康暢(やすのぶ)氏
です。
面識はありませんが、私の論文を参考文献に挙げて下さった数少ない研究者のひとりです。
大城グスクや各地で出土した陶磁器研究から、グスク時代の社会史まで展望した名著
『琉球出土陶磁社会史研究』
この中の注釈で、以下のように拙論を紹介して下さいました。
「成稿後、グスクの聖域の実態を論じた武部拓磨の労作に接した。
グスク内の『自然の岩』(イベ・霊石)に着目し、主殿と併置されていることに着目したのは私見と同じだが、大形グスクを克明に踏査し、グスクの拝所がグスク時代に実在したことを検証している。」
最後にちょっと自慢っぽくなってお恥ずかしいですが、私の説が妄想レベルの血迷い事ではないことをご理解いただけたら幸いです。
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