沖縄の御嶽信仰と、大神(おおみわ)神社に代表される本土の山岳信仰はとても似ている
というのが小島氏の
グスク聖域説(山岳信仰)の核です。
前回の記事(
『グスク信仰説 その2』)では、大神神社の信仰形態の特徴をお話しました。
神体山三輪山と大神神社拝殿位置
Pointは、
・山そのものが信仰対象
・麓から山を拝む
・山中の岩が信仰対象
です。
では、小島氏が指摘した御嶽信仰の特徴をみてみましょう。
小島氏が挙げた例の1つは、今帰仁グスクを見下ろす霊山、
クバ御嶽(クボウ御嶽とも)でした。
クバ御嶽は、琉球の神アマミキヨが琉球開闢のときに創造した聖地としても有名です。

クバ御嶽全景(今帰仁村)
さて、このクバ御嶽には、
「イビヌメー」という拝所があります。
「イビの前」の意味ですが、まずはイビの説明をしないといけませんね。
イビとは(「イベ」とも言う)、
聖域の核となる最も神聖な場のことで、岩や樹木、山などの自然物が祀られています。
神社で言えば、神の依代である
神籬(ひもろぎ)に相当します。
つまり、
「イビヌメー」は、イビを拝むためにイビの前に設けられた拝所の事です。
そしてそして、イビヌメーがクバ御嶽のどこに位置しているかというと・・・
クバ御嶽丘陵の麓です。
麓が「前」ということは、
山そのものが「イビ」ということになります。
つまり
クバ御嶽の山は、神社で言うところの神籬、神体山であると考えられるのです。
では、「クバ御嶽・イビヌメー」と「三輪山・大神神社」の位置を見比べてみてください。
なんと、そっくりではないですか!!
御嶽と本土の山岳信仰が似ていることを示すPointのうち2つ
・山そのものが信仰対象
・麓から山を拝む
が確認できます。
そして、3つ目のPoint
・山中の岩が信仰対象
ですが、クバ御嶽でもやはり岩は拝まれています!

クバ御嶽山頂のイベ石
念のため断っておきますが、
大神神社もクバ御嶽も、特別変わった信仰形態である訳ではありません。
大神神社は、古い時代の社殿のあり方を伝えていますが、山を神聖視する神社の典型です。
クバ御嶽以外の御嶽も、基本的に山全体を禁足地としています。
大神神社は日本の、クバ御嶽は琉球の、信仰の典型なのです。
私は、御嶽・グスクが琉球の山岳信仰の神体山であるという小島氏の見解に賛同しています。
ただし、
グスク聖域説(山岳信仰)支持者ではありません
小島氏は、聖域説の仲松氏と同様、グスクの中に恒常的な人の居住はなかったと考えているからです。
次回、私の提唱する
「グスク支配者聖域君臨説」
の解説に入ります。
ようやっと(笑)
御嶽・グスクの起源は葬所なのか山岳信仰なのかという問題に対する答えも、その中でお話できたらと思います。
参考文献・小島瓔禮「オタケ(御岳)からみた山岳信仰」中野幡能(編)『英彦山と九州の修験道』名著出版 1977年
・小島瓔禮「沖縄の聖地 ―グスクとテラと」『現代宗教―3 特集・聖地』春秋社 1980年

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